転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


410 治癒魔法を覚えるのは大変なんだよ



「そろそろ本題に移ってもよろしいでしょうか?」

「話の腰を折ってすまなかったな。続けてくれ」

 ロルフさんたちが仲直りしたから、お姉さんたちのお話を再開する事に。

「それではルルモア、続きを」

「はい。ハンバー司教様が先ほどおっしゃられた通り、ルディーン君が使った魔法は触媒魔法で神殿との取り決めにより治療費を取らなければならなくなりました」

「うむ。だが、確かその金額は一冒険者が支払うにはちと高すぎるのではなかったか?」

「はい。ですから今回は、冒険者が魔法を使用した際の特例として扱わせて頂こうと考えているのです」

 ルルモアさんはお爺さん司祭様たちに、さっき僕たちにしたのとおんなじ説明をしたんだよ。

 そしたらそれを聞いたお爺さん司祭様は、すっごくびっくりしたお顔になっちゃったんだ。

「なんと、そんな制度があったのか」

「ハンバー司教様がご存じないのも仕方がありません。なにせこの特例に該当する冒険者は、帝国広しといえども数名しかおりませんから」

 魔法使いが使う魔法と違って、神官が使う魔法は発音とかを教えてくれる人がいないんだよね。

 だからもし神官以外の人が治癒魔法を覚えようと思ったら、誰かが呪文を唱えているのを聞いて覚えるしかないんだ。

 でも僕が使ったキュア・コネクトみたいに触媒を必要とする魔法は、そんなに使う事なんかないから誰かが使ってるのを見る機会なんてほとんどないんだよね。

 いくら耳がいい人でも聞いた事のない魔法を覚えるのは無理だから、ただでさえ少ない治癒魔法が使える冒険者さんの中でも触媒魔法を使える人は本当にちょびっとしかいないんだってさ。

「改めて条件を確認すると、少数でもいる事自体が不思議なほどだな」

「はい。その少数の冒険者も皆元は神官だった者、それもダンジョン都市の神殿に勤めていた者ばかりだそうですわ」 

 ちょっと前にこの冒険者ギルドであったカルロッテさんみたいに、冒険者ギルドの手伝いに来る神官さんは結構いるんだって。

 でね、中にはそこで知り合った冒険者さんと仲良くなって、そのまんま神官をやめて冒険者になっちゃう人もいるそうなんだ。

「なるほどのぉ。あそこならば触媒魔法を目にする事は多いであろうから、呪文を覚えていたとしてもおかしくはないか」

「はい。ですからこの規則も、ダンジョン都市以外で適用されたのは今回が初めてなのではないでしょうか」

 今までは他の都市に触媒魔法が使える人が誰もいなかったから、この規則自体を知ってるのもギルドマスターとかルルモアさんみたいに長い間冒険者ギルドにいる人だけなんだって。

 だからお爺さん司祭様が知らなくっても仕方ないよって、ルルモアさんは言うんだよね。

「しかし、そう考えるとこの娘らは運がよかったのじゃろうな」

「フランセン様、それは何故ですか?」

「簡単な事じゃよ。神殿にしか使えるものがおらねば、この娘らの足が治る事は決してなかったであろうからな」 

 使える人がいなかったら、手や足が取れちゃった時はみんな神殿に行くでしょ?

 でもお金がない人は、くっつけてって言っても治してくれないんだってさ。

「どこかで借金をしてから神殿に行く事はできるやもしれぬ。じゃが、これほどの大金を借金奴隷になるならばと貸してくれる者などはたしておるじゃろうか?」

「まずいないでしょうね」

 今回は冒険者ギルドが借金させてくれるけど、普通だったらこんなにいっぱいのお金、誰も貸してくれないでしょ?

 だから僕が足をくっつけなかったら、お姉さんたちはずっと足が無いまんまだったんじゃないかな? ってロルフさんは言うんだよ。

「その上、冒険者ギルドが作った制度のおかげでその借金奴隷にもならずにすみそうではないか。それを運がいいと言わずして、なんと申すのかな?」

 そう言ってロルフさんは、長いあごひげをなでながら楽しそうに笑ったんだ。


「それでは事務的な説明に入りますね。今回、ルディーン君がこの子たちを引き取ろうとした場合、以下のような資格と条件があります」

 ルルモアさんはそう言うと、僕の方を見ながらお話してくれたんだよ。

「まずは借金奴隷を買ったり身元を引き受ける者は、イーノックカウの居住権を持っていなければなりません」

 これはね、他の領地の人がイーノックカウで借金奴隷を買って自分の領地に連れてっちゃうのを防ぐためなんだって。

 じゃあ何でそれがダメなのかと言うと、もしそれを許しちゃうと貧乏な領地から金のある領地に人が流れて行っちゃうかもしれないでしょ?

 そしたらその二つの領地がケンカになっちゃうかもしれないからって、そうならないように帝国の規則で決められてるそうなんだ。。

「なので今回の場合、ルディーン君はまずイーノックカウの居住権を得る必要があります」

「居住権って何?」

「居住権って言うのはね、この街に住むことができますよって言う権利の事よ」
 
 これを聞いた僕は、すっごくびっくりしたんだ。

 だってそれって、この街に引っ越さなきゃダメって事だもん。

「僕、お父さんやお母さんたちと離ればなれになるの、いやだよ」

「ああ、ごめんなさい。これは別にこの街に住まなければいけないって訳じゃないのよ。あくまでこの街に住んでもいいですよって言う権利を得ないとダメって言うだけの話なの」

 よく解んなくって勘違いしちゃったけど、この居住権ってのはこの町に住んでもいいですよって言うだけのものなんだって。

 あれ? でもそれだったらちょっと変じゃない?

「ルルモアさん。それ持ってても、この街に住まなくってもいいんだよね? だったらさ、他の街の人がこの町に住んでもいいですよって言うのをもらったら、買えちゃうんじゃないの?」

「ええそうね。だからこの居住権を買うためには、その都市である程度の立場がある者が保証人になってくれないといけない規則になっているのよ」

 もし居住権ってのを取った人が狩った奴隷を黙って他の領地や都市に連れてっちゃうと、その保証人になった人が罰を受けるんだって

 だからそんな事をしそうな人が居住権ってのを取る事は、多分できないんじゃないかな? ってルルモアさんは教えてくれたんだよ。

「安心した? それじゃあ話を続けるわね。先ほども言った通り居住権を取るには保証人がいるのですが、フランセン様、お願いできますでしょうか?」

「うむ。問題ない」

 ルルモアさんに保証人になってって言われたロルフさんは、にこにこ笑いながらいいよって頷いてくれたんだ。

 だからそのまんま次の条件に行ったんだけど、

「畏まりました。それでは保証人にはフランセン様になって頂くとして、それとは別に申請には500万セント、金貨500枚ですね。これが必要となります」

「えぇっ! きっ、金貨500枚ぃ!?」

 そしたらそれを聞いたキルヴィさん、3人のお姉さんたちのリーダーで赤い髪の人ね。

 そのキルヴィさんが、すっごくびっくりした声を出したんだ。

 でね、そのまんまルルモアさんのとこに行って、

「何故私たちのために、この子がそんな大金を出さないといけないのですか!」

 そう怒ったんだよね。

 でもね、ルルモアさんはそんなキルヴィさんに、話はまだ終わって無いから、元の場所に戻って話を聞いてねって。

 それを聞いたキルヴィさんは、解りましたって他の二人のとこに戻ってったんだ。

「それでは話を続けます。フランセン様が保証人になるのなら資格である居住権は申請したその場で降りる事になるでしょう。では次に必要となる条件ですが、奴隷を買う場合はこの街に住居を構えている必要があります。これは賃貸ではなく、小さくても良いので購入した物件に限られます」

「はぁ!? 家を買うって、この街の中でとなると、金貨6〜700枚は最低でもいるんじゃないか?」

 でもね、次にお家が必要なんだよって言ったもんだから、今度はボルティモさんがびっくりしたような声を出したんだよ。

 もう! みんなが大騒ぎするもんだから、ルルモアさんのお話が最後まで聞けないじゃないか!

 僕、そう思って怒ろうとしたんだけど、

「ええい、だからルルモアが黙って最後まで聞けと言っておるじゃろうが!」

 その前にギルドマスターのお爺さんが、すっごく怖い顔してボルティモさんをコラー!って叱ったんだよ。

 そのお顔が本当に怖かったもんだから、僕、びくってなって、怒ってたのなんてどっか行っちゃったんだ。



 他の物語では結構簡単に買ってますが、この物語で奴隷を買うにはいろいろと条件があります。

 これは奴隷と名がついているものの借金奴隷は基本、労働者という扱いだからなんですよ。

 408話の感想でお姉さんたちが変態さんに買われる未来が回避されてよかったと言うような感想を頂いたのですが、この世界での借金奴隷はあくまで借金を返すための労働を強制されるだけで人権は普通の住民と変わりません。

 なので奴隷を買った人は契約内容の通り働かせる権利はありますが、暴行したり仕事内容以外の理由で大きなケガをさせたりすると逆に犯罪者となってしまいます。

 このような理由なので、本人たちの意思に反して変態さんに売られるなんて事は絶対にありません。

 ただ、本人の同意があれば話は別ですが。娼婦も職業の一つではありますし、借金が多くてすごくつらい職場(鉱山や寒い地域での治水工事など)に何年も従事されるよりはそっちを希望するなんて人もいない訳ではないでしょうから一応選択肢としてはあります。

 まぁ、その様な人は殆どいないでしょうけどね。


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